鎌倉世界遺産登録推進協議会
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武家の古都・鎌倉ニュース第2号

 

鎌倉の仏教寺院と人々の暮らしに新しい視座
初の共催企画『世界遺産シンポジウム』開催


2006 年10 月28 日(土)、建長寺・応供堂で<武家の古都 鎌倉・連続シンポジウム>が開催されました。同シンポジウムは「鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会」との共催企画で、登録推進協議会としては初の事業です。「鎌倉における仏教寺院〜人々の暮らしと鎌倉仏教〜」をテーマに、 基調講演とパネルディスカッションが行われ、活発な論議が展開されました。
 基調講演は、建長寺派宗務総長・高井正俊さんが「仏教寺院の今と昔」(次ページに要旨を掲載)と題し、建長寺をはじめとする中世鎌倉の仏教の成立について4 つの視点から説明されました。そのうえで、「現代鎌倉の仏教寺院と人々のつながりは、法事や拝観になってしまったが、拝観から参加へと進み、皆さんには寺院に来て、宗教的体験をしていただきたい。寺院側も門戸を開く努力をしている。」と、鎌倉の寺院の今後を展望されました。
 第2 部では「現代鎌倉における仏教寺院と活動」と題してパネルディスカッションが行われました。パネリストに高井さん、服部全志さん(鎌倉青年会議所理事長 青蓮寺副住職) 玉林美男さん(鎌倉市世界遺産登録推進担当) を迎え、登録推進協議会理事の福澤健次さんの進行で進められました。
 まず、服部全志さんが若い世代の活動を紹介しました。服部さんは手広・青蓮寺(鎖大師)副住職で、寺内にある宝積院の住職も務めています。同時に青年会議所の皆さんと『鎌倉てらこや』という活動を行っています。 『鎌倉てらこや』は、子供たちが不登校にならないようにすることなどが目的で、鎌倉にある各宗派の寺院並びにキリスト教のカトリック教会も参加しているユニークな活動です。学生や大人のフォローを受けて、寺院等の行事に子供たちが参加することにより、豊かな心を養えることがうかがえました。
 また、玉林さんは日ごろの経験から、現代における文化財保護の在り方について、ただ保護しておくのではなく、現代の知恵を出し合って、保全や補修を行うことなどを提言しました。
 高井さんは「建長寺の理想は、建築的には創建当時に戻すこと」と前置きして、 そのためには寺院だけでなく、市民の理解や行政の力など大きな助けがいることを訴えました。
 最後に、一般の人々が古来から参加している寺院の行事についてのそれぞれの寺院を中心にした興味深いお話のあと、今の社会と仏教寺院がどう付き合っていくかが話し合われました。 服部さんは伝統を継承しなければならない立場から、青蓮寺再建により次々に判ってくる寺院経営の難しさを語りつつ、ボランティアで市民と関わっていく大切さを述べました。高井さんはこれを受けて、寺院もキリスト教会も問わず鎌倉の宗教界が集まって相談し、 皆が参加できる事業、心を育てる事業などを市民と協働で創りだしていくことを提案。超宗派の未来を語るユニークな結論が導かれる中、新しい視座を試みたシンポジウムは、賑やかに幕を閉じました。

 

武家の古都・ 鎌倉 連続シンポジウム基調講演〔要旨〕
仏教寺院の昔と今

臨済宗建長寺派宗務総長 鎌倉学園理事長  高井正俊さん
 
鎌倉を世界遺産にということで、様々な取り組みが行われている。平成17 年度には建長寺の保存管理計画が出来上がった。今回は、それを踏まえて、“ 仏教寺院の昔と今” を考え、鎌倉の寺のありかを確かめようということが話し合われた。
 立場上、基調講演を行ったが、その柱は四つあった。
(1)建長寺と蘭渓道隆禅師。寺は今でいう大学であり、北条時頼が執権として国の舵取りをした時、禅の方法を使って、日本の国を興隆させようとした。 建長寺は、日本の国を担って行く人材を養成する教育機関、文化情報を伝える場所であった。
(2)鎌倉は歴史的に見ると、為政者の作った寺と、信仰の力で出来た寺の二つがあった。前者は、八幡宮( 寺)、寿福寺、建長寺、円覚寺、極楽寺。後者は、日蓮宗の寺・時宗の寺。中間点に高徳院・光明寺がある。
(3)この時代の仏教の特徴として、各宗派が、意識的に人によって選択された。人間が生きようとする時、どんな手段・方法によるか、が問われる時代であった。 たとえば、北条時頼と禅、時頼と律、日蓮の題目、法然の念仏、たくさんある仏教の教えを、人々が意識的に選びとった時代であった。,br> (4)鎌倉という都市は、京都を意識して、政治革命と宗教革命が行われた場所であった。古いものの再発見、律宗の戒律復興を元にした社会事業運動があり、新しい禅や題目の標榜が、興国の思想、国を正しく立てる思想として、提案された都市であった。
 それらの鎌倉の仏教の昔を思って、今後のことをどう考えたらよいか。仏教寺院はどうあったらよいのか。 現在鎌倉には年間を通して1700 万人の人が来る。自然の豊かさ、寺社仏閣をたずねに。この鎌倉の魅力を、寺に生活しているものは、先輩達が培ってきた財産を再発見、再活用していく。拝観される側から、寺社の建物や寺社の宗教的機能を使って、来る人に働きかける寺になる。
 座禅・看経・写経・食の作法・傾聴・現在行われている鎌倉てらこや、いろいろな形で、鎌倉が再び宗教都市として復権していく。各宗各派のたくさんの寺社が、ここにある寺として、互いに補完しあいながら、自分の以っている方法で活動をしていく。これが大事。  鎌倉の寺社は、現在に生きる寺社として、化石となるのではなく、来山する人に働きかけをしていく存在でありたい。

 

「古都鎌倉の世界遺産登録』ってなに?
第1 回「武家の古都」とは

 中世の町並みが残るわけではない鎌倉が、なぜ「武家の古都」と呼ばれるのでしょうか。 鎌倉は、武家が初めて自ら造った政権都市であり、室町時代の中ごろまで、東国の中心として機能していました。その後、都市としては寂れましたが、 徳川氏が江戸に幕府を開くと、鎌倉は武家政権発祥の由緒の地として大切に保護されました。そのため、都市の中心にあって武家政権の守護神とされた鶴岡八幡宮、武家が禅を学んだ建長寺などの武家文化を伝える場や、都市の基軸線となった若宮大路など、 中世の文化と都市の遺産が守られてきたのです。 鎌倉は、近代以後も先人たちの努力により、約700 年に及ぶ武士の時代を築いた「鎌倉の武家」が遺した文化や歴史的遺産と、それらを囲む景観が維持されてきました。このような中世都市の基本構造や趣きを現代まで伝えていることが、鎌倉が「武家の古都」 たる所以なのです。 

 

めざせ!世界遺産登録
あなたも世界遺産登録を進める活動に参加しませんか?

世界遺産を語るTV「鎌倉永劫」  KCC 鎌倉ケーブルテレビ

鎌倉ケーブルテレビは、平成18 年10 月から、鎌倉を中心に進めている世界遺産登録に向けての取り組みを伝えるTV 番組「鎌倉永劫」の放送を始めました。「鎌倉永劫」というタイトルには、次の世代に鎌倉を良い形で引き継ごうという意をこめています。これまでの放送では、切通や和賀江嶋が紹介されました。毎回、史跡の現場では、鎌倉市世界遺産登録推進担当がわかりやすく解説しています。
 「この番組を見て、実際に史跡めぐりにお出かけになるなど、『武家の古都・鎌倉』を再認識していただければと思います」と、番組ディレクターの関根健博さんは抱負を語ってくれました。
◎放送時間:毎月第3 土曜から 1 週間 8:15, 13:15, 18:15, 22:15 (1 日4 回)

 

世界遺産候補「和賀江嶋」へGO!  鎌倉市老人クラブ連合会の皆さん

 鎌倉市老人クラブ連合会の皆さんは、日ごろから各種の奉仕事業に熱心に取り組み、鎌倉市と市民に貢献する活動を展開しています。世界遺産登録に向かっても登録推進協議会に参加して、 意欲的に調査・研究に取り組んでいます。
 今企画を温めているのが、世界遺産登録候補地のひとつである「和賀江嶋」見学会です。「和賀江嶋」は、鎌倉時代に築港されたわが国唯一の築港遺跡です。 勧進上人の「往阿弥陀仏」が船の着岸に最高であるとの理由から、 時の執権北条泰時に築港を願い出て、 1232 年に完成しました。遠浅の材木座海岸、和賀江嶋は全国の物資を交易する港として格好の場所で、遠国からの大船が数十艘も停泊して壮観、見事であったと伝えられます。
 会の教養部長・都筑健一さんは「偉大なる先人たちの史跡を世界遺産に登録するために、 渾身の努力を傾倒したい」と、熱心に話してくれました。

News! the 世界遺産

登録推進事業に活力!登録推進事業部会と広報部会が合同会議
世界遺産推進協議会は、事業部会と広報部会に分かれて活動を進めていますが、両部会の連携を深めるため、11月9日両部会の合同会議を開きました。  両部会から各々の取り組みの状況説明があり、鎌倉の世界遺産登録を理解してもらうために「鎌倉の世界遺産マップと解説」を作る必要があるということで一致し、両者から作成委員を選出して、早速作成に当たることになりました。  現在推進活動としては、広報紙が創刊され、ポスターや各所の看板掲示などでスタートを切っていますが、これを契機に一層尽力していくことで合意しました。 

 

Event! the 世界遺産

鎌倉世界遺産登録推進協議会 オリジナル企画第1 弾!
養老孟司会長講演会 〜生きているまちの世界遺産〜

東京大学名誉教授で、登録推進協議会会長である養老孟司さんが世界遺産登録について語ります。
とき 平成19 年3月10 日(土) 午前10 時〜 11 時30 分  
ところ 鎌倉生涯学習センター(きらら鎌倉) ホール
参加費/ 500 円  定員/ 280 名  主催/鎌倉世界遺産登録推進協議会  
申込方法/電話、FAX、メールなどで下記事務局まで。申込受付は2 月15 日からとなります。
申込・問合せ先/事務局(鎌倉市世界遺産登録推進担当)
     Tel .0467-61-3848 Fax.0467-23-1085 E-mail: sekaiisan@city.kamakura.kanagawa.jp
※ 申込方法等については、改めて『広報かまくら』等でお知らせします。

世界遺産をめざす町のために  並河萬里 写真展 〜破壊された文化遺産 バーミヤンより〜

とき 平成19 年2 月2 日(金)〜 2 月22 日(木)  時間 午前10 時〜午後5 時(最終日午後4 時まで)
ところ  カトレヤギャラリー(鎌倉駅東口カトレヤビル2F)
 世界の文化遺産や偉大な風景の写真作家として活躍した並河萬里(なみかわばんり)さん。晩年を鎌倉山で過ごし、世界遺産やユネスコに貢献しました。 今回は、アフガニスタン・バーミヤンの大仏が破壊される前の貴重な作品が展示されます。
観覧料/無料  後援/鎌倉市 鎌倉ユネスコ 鎌倉商工会議所 (社)鎌倉市観光協会  
問合せ先/カトレヤギャラリー  Tel .0467-23-2530    主催/ NPO かまくら緑の会

Watch! the 世界遺産

県内の中学生が多数応募した文化財保護のためのポスター展で、「世界遺産登録をめざす 武家の古都・鎌倉」部門最優秀賞を受賞した 尾澤 綾音さん(鎌倉市立深沢中学校3年)。授賞式のあと、感想を聞きました。 「受賞できると思っていなかったので、それに、中学生として最後なので、受賞をうれしく思っています。 自分の住んでいる場所が世界遺産登録されたなら、誇らしく、うれしいです。 好きなところは鶴岡八幡宮です。思い出があり、一番好きなので、今回の題材にしました。」さらに「鎌倉のいいところ、特に素晴らしい自然について、鎌倉は自然があふれていてとても素晴らしいということを皆さんに伝えられたらいいなと思います。」とのこと。 その願いは素敵なポスターが伝えてくれることでしょう。皆さんもいろいろな行事に参加してください!

「元気アップ!御成商店街」を合言葉に、第一回鎌倉芸術祭に『鎌倉御成商店街ギャラリー 埋蔵文化財が語る鎌倉』展示が特別参加しました。 御成地区で発掘された埋蔵文化財を、10 軒のウインドウと風致保存会に展示する試みが好評でした。このような展示が各所に広がるといいですね。

編集後記  

第2 号は、まず登録推進協議会の初めての事業として「鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会」との共催で行われた、世界遺産をめぐって鎌倉仏教の在り方を問う基調講演とシンポジウムの様子を紹介しました。シリーズとして、鎌倉の世界遺産登録についての連載を始めました。 また登録推進協議会の構成団体における世界遺産関連の取り組みを順次紹介することにしました。ニュースとしては、本会の登録推進事業部会と広報部会の合同会議が開かれ、合同で鎌倉の世界遺産登録を紹介する地図をつくる予定であることをお知らせしています。 今後、構成団体の世界遺産関連の活動状況などを柱に編集していく方針ですので、皆様のご協力をお願いします。<内海恒雄> 

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