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第1回「世界遺産に鎌倉を」(平成19年)報告2頁

Aテーブル報告 テーブル進行役 大竹正芳

Aテーブルは旧鎌倉地区の70歳代以上の男性グループでした。鎌倉に長く住まわれている「鎌倉の人生のベテラン」であり、事前からどのような発言が出てくるのか注目されていました。シートに書く作業の前の話し合いでも盛り上がり、興味深い話も出てきました。以上を踏まえて報告致します。
「登録で期待できること」、「懸念されること」、「鎌倉のまちの良い面」、「好きな面」と「悪い面」、「きらいな面」の意見をそれぞれ見てみると、鎌倉市民としてのプライドと自然環境、交通事情などの生活環境についての意見が多かったように思います。
悪い面では閉鎖的で古い人間が支配しているとの意見もありました。鎌倉市民の閉鎖性はよく聞く話で、私もつねづね鎌倉市は個人主義が突出した地域だと感じています。個々の団体や地域もそれぞれの意見や縄張り意識が強く「一般市民として世界遺産登録を必要としている人が少ない」、「ガイド協会が扉を閉ざしている」等の意見が出てくるのも鎌倉の閉鎖性が原因なのかもしれません。シートには書かれませんでしたが傲慢という意味合いで「鎌倉市民のプライド」を挙げた人もいました。緑の問題や交通インフラ、観光公害など生活環境にまつわる意見がやはり多かったと思います。鎌倉の街としてのキャパの小ささにも言及され、例えば「世界遺産の指定でさらに人が増えたら混雑するのではないか」という不安も出ていました。緑地に関しては世界遺産登録により、保全出来るのではないかという期待も持たれています。
話し合いの中でとくに印象に残ったのは外部に対してアピールが無いという指摘でした。現在の世界遺産のアピールが市内、せいぜい首都圏にとどまり、外国人にはほとんどアピールされていないという意見でした。また市役所の前で修学旅行生が目的地とは見当違いの方向に行こうとしていたのを正しく教えてあげた人がいて、市内とくに市役所の前にはもっと分かりやすい案内板がほしいという意見がありました。
鎌倉世界遺産登録推進協議会のテーブル参加委員のうち、Aテーブルは中村公司委員が担当されましたが、同委員らが中心となって決めた鎌倉世界遺産登録のロゴマークもまさに外に向かったアピールであり、同推進協議会のマップ委員会(現・出版委員会)の活動も外部への大きな宣伝力だと思います。しかしそれでもこのようなマイナス面の意見を聞くと、まだまだ努力不足だと反省させられます。今後はこのような住民の意見をもっと聞き入れ、より良いアピールの仕方を考えないといけないと思いました。
『鎌倉のまちの良い(好きな)面、悪い(きらいな)面が「期待できること・懸念されること」でどのように変わっていくのか』についての話し合いはそれまでの話を煮詰めるような意見の交換がなされました。プラスの面では意識の向上という一つの流れがあり「世界遺産登録により鎌倉のイメージが良くなるため市民のプライドや認識が高まりそれにより鎌倉市民の閉鎖性も改善され、さらには日本国民の関心や意識も高まる」というまとめが出来ました。
 マイナス面の方は一言でまとめることはできませんが、やはり管理に対する行政の財政負担と観光客が増えることによる市民の生活環境の悪化を不安視する意見が主流でした。
観光客のマナーの悪さも問題として触れられ、「軒先まで入ってくるようになる」という懸念も挙げられます。実際、すでに鎌倉市内では各地で勝手に私有地に入り込み、ひどい場合は庭先を荒らしていくケースがあると聞かされています。世界遺産候補地の一つ「仏法寺跡」が現在立ち入り禁止(2008年4月現在)になっているのも私有地から登れるようにしていたら荒らされてしまったことが理由だそうです。
「鎌倉の交通混雑を緩和するため道路の地下化をするべきだ。」あるいは「遺産維持のための(観光客から)税を取るべきだ。」等の意見もありました。
今回のワークショップは全体的に成功であったと思います。多くの人々が同じようなことに期待を持ち、その反面で生活に与える影響を懸念していることが改めて感じられました。鎌倉市の人口17万3千人のうち、わずか数十人の参加でしたがここで出た意見は、鎌倉の多数意見を想像できるものだったと思います。行政がやらなくてはいけないものについて真摯に受け止めてもらい、鎌倉世界遺産登録推進協議会や各市民団体も意見を分析し、より効果的な活動をしなくてはならないと思いました。
実に有意義な一日で、次回のワークショップがさらに良いものになることを願ってやみません。
ディスカッションの様子
 

Bテーブル報告 テーブル進行役 高木規矩郎

Bテーブルは鎌倉時代のやぐらなど歴史遺産の周辺に長く住んでおられる方も多く、日常的に世界遺産登録に深い関心を持つ60歳代が中心で、発言の一つ一つが具体的で説得力を持っておりました。活発な意見が出されましたが、時間切れで集中的な議論がとぎれてしまうこともあり、ワークショップの時間配分などにもう少し配慮があってもよかったのではと思いました。進行役の責任でもあるのでしょうが、発言時間が短くて多少不満が残ったような印象です。
設問Iの世界遺産登録に対する「期待」としては、「乱開発にストップがかかるのではないか」など開発がらみの意見が多く、三方を山に囲まれた鎌倉で山が切り崩され、宅地化が進むことへの懸念を示しているように思いました。
「目に見えないものを検証したり、復元する努力」は、大倉御所跡という重要な歴史遺産が世界遺産の候補地にすらあがっていない現状を踏まえた発言でしょう。 「保存状態が良好なやぐらを候補地に入れるべきだ」という具体的提言をさらに掘り下げて、日月やぐらをバッファゾーンの中心にすえて学術調査を呼びかける指摘が関心を呼びました。
世界遺産への「懸念」については、「逗子に比べて鎌倉は物は高いし道もせまい」という生活に密着した意見と観光地としての激変に対する不安に集約されます。「観光客の激増に備える準備が何も出来ていなかった」という石見銀山の症例も紹介されました。
設問IIの「鎌倉の街良いところ、悪いところ」については「鎌倉駅に降りると果たしてここが古都なのか、武家なのか首をひねってしまう」と率直な疑問が出されました。ここでも具体例としてあげられたのは、「若宮大路や御成のマンション」で、開発がらみの疑問でした。
「相続税が払えないからと売ってしまう大きな屋敷」という疑問については、屋敷が消えれば、庭にあった樹木も消えるので、現在の鎌倉が抱える深刻な問題です。設問Iで出た大倉幕府跡の処理という視点もからんで、「鎌倉市が清泉小学校敷地を買って、幕府跡の発掘をしてもらうのが一番ではないかと思う」との提案も一概には否定できない側面があるように思いました。要は市や県が世界遺産登録推進にあたって、どこまで腹をくくって臨んでいるのかという本音を問われた思いです。
設問IIでも中心テーマは開発問題でした。協議会委員が開発にかかわる問題を総括してくれました。「何とか緑をこれ以上減らさないようにしたい。これ以上緑が減ったら世界遺産は無理だというところに来ています。今までは文化庁の顔をこちらに向けることに精一杯でしたが、今は開発阻止運動そのものです。昔からある大きなお屋敷の保護 は、開発を阻止し、そして自然と景観をまもるための避けては通れないテーマなのです」と訴えていたのが、強く印象に残りました。
設問IIIは設問の主旨があいまいだったためか、設問IIとレスポンスが区別できない面もありました。今後の設問設定の際の課題としてください。私は「要は鎌倉の将来像」と解釈して、意見を求めました。
「観光客が来なければ、もっといいところなのに」と本音を漏らす方もおられました。
観光客のゴミ処理に悩まされる一方でコンビニや自動販売機があちこちに増えるという「近代化」の中で、鎌倉としての個性が失われていくことは、Bテーブルの共通した不安のように思えました。「世界遺産をめざすなら、頑迷なまでにそうした近代化を排除していかなくてはならない」というのはやや過激な発言にも思えますが、古都の環境を守る上での意識変革が必要だということなのでしょう。
「開発」に加え、「交通」「観光」「環境」が鎌倉の将来を見極める重要テーマとして集約されたと見て、参加者一人一人に具体的な提言を聞いてみました。 交通については「朝比奈、小坪、小袋、極楽寺、大仏坂トンネルから中に入れないようなことをかんがえなければならない」として、すでにお正月の対策として定着している車の市内進入規制を拡大する意見や、市内乗り入れ料の設定などが提示されました。
鎌倉は日帰り観光客が大半ですが、残していくゴミ処理などに対処するためのエントリーフィー構想も注目されます。現在鎌倉市では世界遺産マップなどを無料で配布していますが、駅などでエントリーフィーと交換に手渡すといった具体的な方策も論議されました。
「リサイクルが全国ナンバーワンという鎌倉の現状を世界遺産登録推進の運動にからんで、観光客にも知ってもらう努力が必要なのではないか」との意見は、市民生活改善と古都保存という近代都市鎌倉の抱える課題を象徴的に物語っているように思いました。

Cテーブル報告 テーブル進行役 アルバレス万智子
 

Cテーブル報告 テーブル進行役 アルバレス万智子

Cテーブルは、芸術・文化関係のグループというくくりでしたが、鎌倉同人会、鎌倉ペンクラブ、鎌倉市民検定の会、鎌倉シルバーボランティアガイド協会など、鎌倉の町に思い入れの強い活動をされている方々のテーブルでした。一住民という視点に留まらず、参加者の方々の所属団体の多様性も反映してか、今回のテーマの枠を超えて、世界遺産についてもっと市民がディスカッションすべきであるなどの提言も多く、「鎌倉の町」のありかたを考える必要性が話し合われました。
まず、鎌倉の良い面、好きなところは、「いつ来ても様子が変らないのでほっとする」、「海山の自然に恵まれている」など、自然環境の良さがあげられましたが、それを上回っていたのが、町の変化に対する辛口な意見でした。
昔は、静かで、着物姿の女性も多く見受けられる町だったのに、今は、人も多く交通渋滞に悩まされること。小町通りの原宿化、軽井沢化などを憂える声が多く、「レベルの低い観光客により、町が変貌している」こと、それを食い止めるためにも「文化的な観光イベント・企画をもっと提供することで、観光客の差別化(レベルアップ)につなげる」など、もてなす町側の努力の必要性や、有料でもいいのでトイレ(特に外国人女性用に洋式トイレ)を増やすべきというハード面でのもてなしも提案されました。
生活の場所としての鎌倉と観光地としての鎌倉の二つの見方があると同時に、諸問題を住民(生活者)の立場で議論するのか、観光客という立場で議論するのかで方向性も全く異なるのではないかとの指摘もありました。
「鎌倉の夜は早い・暗い」                             
それが鎌倉だ! として何も変らないのか、変えないのか、観光都市として腹をくくって観光客が日帰りでなく、泊りがけで楽しめる町にするのかという議論をすべきだという意見が出されました。
鎌倉の世界遺産登録で期待されることとして、「鎌倉の町の小規模住宅(ミニ開発による大邸宅跡地の切り売り)によって変り行く鎌倉の街並みや緑が護れるのではないか」という、世界遺産登録によって、鎌倉らしさを失わないまちづくりの実現に期待するという意見や、最も辛口なものとして、「北鎌倉に建ったバタクサイ洋風建築は町にあわない」として、鎌倉スタンダードの建築基準化の必要性を強く求める意見もありました。
 現実問題として住民の自主規制は世界遺産により生まれるかもしれませんが、すでに建っている住宅の様式を変更することは、鎌倉市が買い上げる以外無理ではないか、新築の住宅で純和風のものが占める割合は決して高くない鎌倉で、世界遺産登録の対象とされている武家の政権都市としての時代に築かれたものと、横須賀線開通以降の別荘文化や日本全体の西洋化によってもたらされた西洋様式の建築物が混在する鎌倉を「世界遺産登録」という理由でどこまで規制できるのか、すべきなのか結論を出すことは困難であるように思えました。
日常的に「町」をテーマにした議論を多く交わしていらっしゃるCテーブルは、市民へのPRが足りない、小中学教育にも積極的に取り上げてもらい、家庭での話題にも上るような盛り上がりが必要であるとし、市民が「町」をテーマにしたディスカッションをもっと行い、自分たちの町に対する関心を持つ機会を増やすべきとの提言がなされました。
まちづくりに関して辛口発言が飛びかうテーブル。その真剣な思いは、鎌倉に対しての愛情表現であり、自分たちが変えていかなければ、護っていかなければ、という強い決心の現れと感じました。しかし、鎌倉に住まう人々は、多様性を持ってこの町を選び暮らしていて、温度差もあります。この温度差を埋めていくためには、一部の盛り上がりだけでは良い出口が見つからないように思えました。
Dテーブル報告 テーブル進行役 田川陽子
 

Dテーブル報告 テーブル進行役 田川陽子

テーブルDには、候補遺産を抱える地域外の市民9名が参加しました。内2名は鎌倉市外からの参加で、市外に住んでいると世界遺産登録についてよく分からないので、知りたいと思って参加したということでした。
 候補遺産を抱える地域外ということで、遺産登録についてこの地域の人たちがどう感じているのか、また候補遺産のある地域の人たちとは異なる意見が出るのか、注目されるところです。
 まず、玉縄城址がなぜ候補遺産に取り上げられないのかという意見が出されました。この問題については遺産登録推進協議会広報部長の内海さんがテーブルにこられ、玉縄城址が国の史跡に指定されていないこと、また玉縄城は戦国時代に北条早雲が築城し、「武家が始めて作った政権都市」というコンセプトとは時代が異なるという理由で、現時点で候補遺産にするのは無理があるが、鎌倉の歴史遺産として護っていきたいと説明されました。しかしながら、「武家の古都」とするなら北条早雲も武士だとする意見と、かみ合わない部分もありました。
 鎌倉の歴史認識が鎌倉時代だけではなく、その前後の時代にも焦点が当たることを期待するという意見も出されましたが、これは上記の意見と趣旨は同じと思われます。
 次に、世界遺産に登録されると、候補遺産のある地域に文化予算などが回され、玉縄などの地域はその分影が薄くなると懸念する意見もありました。
 また、候補遺産の多くある旧鎌倉地域とそれ以外の地域の住民に意識差があることも指摘されました。この意識差について具体的に話し合うことはしませんでしたが、この点についてはもっと議論を深めていく必要があります。
 見たところ世界遺産登録に関しては、上記のこのテーブルならではの事例を別にすれば、旧鎌倉とそれ以外の地域の住民間にあまり意識差は無いように思えます。私自身は旧鎌倉に住んでいますが、この日の話し合いを聞いていてそれほど差が無いように感じました。
鎌倉が世界遺産登録を目指していることはかなり周知されていると思いますが、そのイメージは漠然としていて、遺産登録で期待できること、懸念されることとして、このテーブルで出された意見は他のテーブルにも共通するものが多かったように思います。
期待されることとしては、景観保持のための開発規制強化を期待する意見が多く出されました。特に住宅地の細分化や緑地の宅地開発への規制をも望む意見が多かったと思います。
また懸念されることとしては、交通の混雑、観光客の増加による市民生活と環境への悪影響を挙げる意見が目立ちました。小町通りの原宿化や、観光客の増加によって物価が上昇することを懸念する意見もありました。
鎌倉のまちの良い面として、「鎌倉の町をよくしたいと考えて汗をかく人がたくさんいる」という意見が出されました。実際、このテーブルの参加者9名のうち6名が何らかの市民活動に関わっています。
鎌倉は伝統的に市民パワーの強いまちで、六十年代には八幡宮の背後に広がる御谷の森を宅地造成から護ろうと市民が結集した御谷騒動があり、それをきっかけに古都保存法が制定され、風致保存会も発足しました。最近では、三十年来の市民運動が実って広町の森が保全されることとなり、その管理運営にも市民が大きな役割を果たしています。いずれの場合も市民の間での盛り上がりは相当なものだったようです。
世界遺産登録について市民の間で盛り上がっているとはまだいえないように思います。登録が何かよそ事で、自分たちとは関係のないところで進んでいるような、そん風な感じが現状ではないでしょうか。そんな感じが今回のワークショップで少し変わるのではないかと思いました。
市民の一人一人が、自分たちで鎌倉のまちについて考え、よくしたいと思うひとつのきっかけとして世界遺産登録が位置づけられれば、登録を目指す運動それ自体が、大変重要なものになるのではないでしょうか。その意味で、今回のようなワークショップでより多くの市民の声を結集させ、議論を深めていくことはとても意味深いこととワークショップを終えて感じました。

Eテーブル報告 テーブル進行役 長谷川栄子
 

Eテーブル報告 テーブル進行役 長谷川栄子

Eテーブルでは、市の中心部で商売や営業を営まれていた方が多かったこともあり、商業や観光のあり方、バッファーゾーンの街並みのあり方などに関心が集まったように思います。とはいうもののシートに書いていただいた以上に多様な意見も飛び交い、様々な課題が浮き彫りにされたことも事実です。ですので、ここでは紙に書かれていない意見も含めて、どのような方向で話が進んでいったのかをご報告します。
Eグループでは最初に、何故世界遺産にしなければならないのか、というテーマから意見が出始めました。「今でも鎌倉は世界的に認知され、充分にブランド力もあり、いまさら世界遺産にする理由がない」という意見や、「これ以上の商業化で観光客が増加することを懸念」する声もありました。
もうひとつは街の美観です。「電柱や自動販売機などが露出する美しくない街は世界遺産にふさわしくない」というものですが、これに関しては、「世界遺産になることでモラルが向上し街も今よりはきれいになるのではないか」、さらに「開発にも歯止めがかかるのではないか」という期待もあるようでした。
鎌倉の街がきれいではないと感じる一方で、「他の街に出かけた時にその退屈でありきたない風景に驚く」という声もあり、そうした意見が出始めたあたりから、『鎌倉らしさ』ということが話しのテーマに加わっていきます。「他の街に出かけてはじめて気づく鎌倉の街の良さ」、ということです。
『鎌倉の良さ』、『鎌倉らしさを残す、あるいは築いていく』ためにはどうすればよいのだろうか、という問いから浮き彫りにされていった課題が『量より質』『地元に対しての姿勢』でした。商業化の懸念も、つまるところは「外部からモラルのない商業者が数多く入ってくることによる質の低下」であり、最終的には「地元に支持される商業が、レベルの高い観光にもつながる」という意見に集約されていきます。
『量より質』に関しては、住宅地のあり方も同様で、「モラルのない住民や商業者に対抗するため、不動産屋がもっと協力すべきである」という意見や、「車のアクセスなど、とかく便利にしすぎないことが質の担保につながる」あるいは「持続可能な循環型社会に貢献的な企業を誘致する」、「規制で抑えていくしかない」などの意見が出ました。
 規制に関しては「ハード・ソフト共に鎌倉らしさを築いていくための内容を、住民の合意で決めていくべき」で、「協定では拘束力が弱いので景観法で制定していくべきである」という意見にまとまっていきます。法規制の内容は、「既存不適格で既存建物が存続できなくなることを避ける」、あるいは「路地は残していくなど鎌倉らしさを築く、独自のものにすべきである」という意見でした。
世界遺産は鎌倉の街全体が対象ではなく、あくまでも個々の歴史的遺産を対象とするものであることをお伝えした上で話し合いをスタートしました。
はじめには「世界遺産を地域振興に結びつけるべきではなく、あくまでも歴史的資産を子孫に残していくことに力点を置くべきである」という意見も出されました。
しかし話し合いが進むにつれ、参加者の関心はバッファーゾーンに重きが置かれ、さらに街全体に広がっていきました。世界遺産になるからには、その対象だけに留まらず、街全体に及ぶ課題にならざるをえないと認識されている方が多いということだと思います。
しかし次に世界遺産登録推進の動きという観点から見た場合、「そもそも鎌倉市民は安住しており燃え立つものがない」、「世界遺産推進の動きがあること自身知らない市民も多く、興味や関心のない人たちを動かしていく良い契機になるのではないか」といった声も挙がり、「鎌倉市を文化・事業のあるモデル都市にしていきたい」という熱い意見も出され、「動きや気運をつくっていくことがまずは大切」で、「そのためには我々は相当腹をくくらなければならない」という覚悟も伝えられました。
全体として、時間が足りなかったと思うほど、良い意見が数多く出されたワークショップだと感じました。世界遺産にするかどうかは二の次にしても、世界遺産推進をきっかけに、まちづくりを真剣に考えるいい契機になったのは事実だと思います。
個人的な感想ですが、国内外を問わず他の街を訪問する時アイデンティティがはっきりしている街、住民が豊かに楽しく生活をしている地に足のついた街に魅力を感じていることを思いだし、今回の参加者の意見の多くが同じような観点であったことを単純に嬉しく思いました。
最後に、「このワークショップの声はこれからの世界遺産推進の活動に、きちっと生かされるのか」という質問を頂戴しました。今回のワークショップで最も重要なものとして受け止めなければならないと痛感しました。

Fテーブル報告 テーブル進行役 山崎恵美
 

Fテーブル報告 テーブル進行役 山崎恵美

Fテーブルは、大学生のグループでしたが、ここでみられたのは世界遺産登録を推進する動きへの若者層のとまどいでした。彼らは、最近まで鎌倉を世界遺産にしようとする動きがあることを知らなかったといいます。そのような、世界遺産登録を推進することに対して関心の及ばない、あるいは知らない層というのは、若い世代にかなり多いのではないかということをこのワークショップを通じで実感させられました。
しかし、このテーブルは世界遺産に対して反対というわけではなく、むしろそれをアピールするためにはどうしたらいいかというような意見が数多く出ました。
しかしこのテーブルに常に頭をもたげてきたのは、そもそもなぜ世界遺産にするのか、一体鎌倉の何を世界遺産として登録するのかという疑問でした。この問いは世界遺産の話を進めていく上ではとても重要で、見過ごしてはならないものと思います。
Fテーブルでは、まず鎌倉のまちの良い面から意見がだされました。やはり、「歴史を感じる」、「緑や海などの自然が多い」、それでいて「建物の高さが低い」、「チェーン店の景観整備もされている」などの洗練された雰囲気も混在する居心地のよさというのが共通した意見でした。悪い面としては、「観光地にしてはトイレが少ない」という意見や「歩道が狭く人が歩きづらい」、「自転車が走りづらいし、停めるところも少ない」「観光客で混雑が激しく日常生活に支障がでる」といった、観光地として大勢の人を集めているにはインフラ整備が不十分であることを挙げていました。
また開発に対しては、「開発のために鎌倉の街並みが統一感のないものになっている」というという意見もありました。さらに「鎌倉は世界遺産にするほどの史跡があるのだろうか」という疑問や、「世界遺産登録に向けての動きに関する情報が市民に全然伝わっていない」という指摘もされました。
 それでも世界遺産登録に対してきっぱりとした反対意見がないのは、「世界遺産になれば、市街が整理されたり、鎌倉のまちなみや環境が、らしさが守られる」ことに加え、「世界遺産登録への動きを通じてまちを良くして行こうという意識が住民の中で盛んになり、今あるそれぞれのまちづくり活動同士や行政、企業などとのつながりをつくる良いきっかけになるだろう」という期待からでした。
そうして、「より鎌倉のまちに、住民が愛着を持てるようになるのではないか」と考えていました。こうした考えは各人に共通のものでした。
その一方で、「街を整備するといってもどのように整備していくのか」、「世界遺産として登録する以外の自然も守られるのだろうか」という疑問や、「‘武家の古都’以外の鎌倉の文化―例えば明治、大正、昭和、そして「湘南」としての鎌倉―が残されるのだろうか」という懸念、また「結局テーマパーク化してしまい鎌倉らしさが残らないのではないか」、「観光客が増えてかえって環境が悪くなりはしないか」、「それぞれの考える残したい鎌倉の方向性が一つに定まっていないのではないか」という意見などもありました。
では、世界遺産登録に向けて運動するという方向で考えていくとして、その動きを広く知ってもらうためにはどんなPRができるのか、というところでそれぞれアイディアがあるようでした。
「旅行会社とタイアップをしてイベントや企画を行う」など、企業と提携することにも積極的な意見が出されました。
今回は、若者層の意見を聞く貴重な機会だったと思います。彼らの考えていることは核心をついた問いが多く、これら出された問いにきちんと答えられて初めて、世界遺産登録へと話を進めていくことができるのではないかと思いました。
また、彼らは鎌倉のまちに愛着を感じており、もっと鎌倉を盛り上げていきたいという情熱を強く感じました。彼らの企画力とフットワークの軽さをもっと活用して、広く世界遺産登録に向けての動きを知ってもらえれば、市民の中でも盛り上がっていくだろうと感じました。
こうしたまちづくりの動きでは若者が参加することが少ないのが現状であり、そうした若者層にもっと目を向けて働きかける工夫をしていかなければならないのではないかと思いました。

Gテーブル報告 テーブル進行役 横川 啓
 

Gテーブル報告 テーブル進行役 横川 啓

Gテーブルは、鎌倉高校の「鎌倉学」というクラブに入っている生徒たちのテーブルでした。詳細は聞いていませんが、鎌倉学クラブは鎌倉の歴史や観光などを学んだり、地域ボランティアに参加したりという活動をしているようです。
顧問の先生を含めた生徒たちの現住所は藤沢、茅ヶ崎、横浜など、全員が市外在住者でした。市外在住の高校生たちということもあり、最初は言葉少なく始まりましたが、中ほどからみんな活発に発言し出し、私自身も、昔を思い出しながらの楽しいひと時となりました。
「鎌倉の世界遺産登録で期待できること」では、当初、世界遺産をどう考えたらいいのか迷っているようでしたが、観光客の増加とそれに伴い観光収入が増加するなどの、会話をきっかけとしていろいろなやりとりが始まりました。
特に近隣市に住んでいるということで、自分たちも、登録されたら「鼻が高い」という発言から、県民としても誇りを持てるのではないかという意見となりました。
また、市民や観光客の文化財などへの関心が高まり、それらの保護につながることが大切だという意見も出されました。
「〜懸念されること」では、住民生活への規制がどうなるのか心配である、ゴミが増えその処理が負担になる、今でも交通網が不十分でありもっと混雑するのではないか、気軽に立ち入れない地域ができるのではないかなどの意見が出されました。
特に、鎌倉高校周辺の道路や江ノ電の激しい渋滞・混雑を日常生活で経験している中で、これ以上激しくなったら大変だと言う想いを持っているようです。
また、近代化しづらくなるという意見は、今でも鎌倉は若者が遊べるまちというイメージは少ないが、世界遺産登録でますます若者が遠ざかるのではないか、という意味で出されました。
「鎌倉のまちの良い面」「〜悪い面」では活発な意見が交わされました。特に私が面白いと感じた点を紹介します。
まず良い面としては、鎌倉という名前にブランド性があると感じていて、鎌倉高校に通っているという高校のブランド性もあるのでしょうが、鎌倉という地域のブランド性とあいまって、それだけで感心されてしまうと言うことでした。
町歩きをすると谷戸の風情だけでなく、普通の町並みも独特で見ていて飽きない、と感じるそうです。また、空気がきれいだと感じていることも大切だと思いました。 悪い面としては、物価が高いと言う意見が一番に出され、高校生としては深刻な問題なんだなと感じました。海風が強いというのは海岸線(または鎌倉高校)特有の問題ですが、スポーツ部などの活動には大きな影響が出るようです。
娯楽施設が少ない、家族向けの感がある、店の傾向が土産物屋さんに偏っている、などは、物価が高いとあわせて、大人向けまちという印象につながっているようです。
最後に「どのように変わっていくのか」についてですが、どのように考えればいいのか計りかねているようで、時間が足りなかったというのが正直な感想です。
当初は言葉少なくなってしまいましたが、最後の方になっていろいろなアイデアがだされ活発な議論になりました。
特に、排気ガスや渋滞対策のために人力車を観光での移動のメインに据えて、車夫を公務員にするという案は独創的ではないでしょうか。
また、商店街問題やまちづくりの諸課題へ対応策として、自治の力で解決することが大切だと考えている点は大いに感心しました。

ワークショップ「世界遺産に鎌倉を」について コメンテーター 伊達美徳  

ワークショップ「世界遺産に鎌倉を」について コメンテーター 伊達美徳

元市民(四半世紀住んだ鎌倉を5年前脱出)であるわたくしは、鎌倉について若干は知ってはいても、世界遺産についても鎌倉の登録運動もよくは知らないのです。それでも厚かましくコメンテーターとは、その立場での発言も有用と思ったからです。
1.世界遺産とはなんだろうかー初めのコメント
(1)真正性について
 そもそも世界遺産とはなにかと調べてみると、基本は戦争や開発で失われようとする世界的な人類の資産(個々の遺産は「資産」)を守ろう、であるようですね。そしてその資産が、オリジナルの材料と形態があること(真正性)でもって登録するそうです。
 でも文化遺産ならば、創始から現代まで歴史が長いほど、当初の材料と形態の改変が加えられており、その改変もまた歴史であり文化であるはずです。生きた都市鎌倉での登録推薦文化資産(以下「推薦資産」)はまさにそれでしょうし、重層する歴史をになってこそ文化財と思うのですが、世界遺産の真正性に抵触するような気もします。
(2)緩衝地帯について
 個々の推薦資産の範囲を境界線で決め、その周辺にその「保護を支える機能」を持つ緩衝地帯を設ける、とされています。ところで、世界遺産のケルン大教会堂が、緩衝地帯に建ち上がる高層建築で登録抹消寸前になったそうです。日本には市街にある文化財建築を保全するために、その敷地から周りの敷地に開発権(容積率)を移転させる制度があります。最近の実例は東京駅赤レンガ駅舎(重要文化財)で、周りの超高層建築群は赤レンガ駅舎を低いままに保存するためにできたのです。それなら東京駅は世界遺産にはなれませんね。ユネスコに言わせるとこんな文化財保存方法は間違っているのでしょうか。鎌倉のいくつかの推薦資産は市街と接しているので、市街を緩衝地帯にすることにしていますが、そこが推薦資産の保護を支える機能となり得るのでしょうか。
(3)世界遺産の登録意義について
 文化財は市指定より県指定、それより国指定が高級とする一般的な感覚があります。それよりも高級な“世界指定”にしたいのでしょうか。そのうちに「宇宙遺産」ができるかもしれませんね。文化に優劣をつける感があるのが、どうも気になります。  それでも世界遺産登録を目指すのは、なにか高尚なる目的があるか、それともなにかの作戦か戦術としての意味があるのでしょうか。俗な言い方ですが、世界遺産に登録されるとどんな良いことがあるのでしょうか。国指定史跡や重要文化財では不十分なのでしょうか。途上国でない日本に、ユネスコの世界遺産基金から投入はないでしょうね。
2.市民による世界遺産登録運動にこそ意義がある−中間でのコメント
 各グループにおける多様な発言を伺うと、世界遺産登録運動を契機とするまちづくり運動の様相を持っていることがわかりました。Fテーブル大学生たちの中間発表で、この運動を通じて市民・行政・学生・企業の連携で、都市に愛着を持つようになるとの意見が出されていることは、正に運動のもつ基本的な意義を意味しています。
世界遺産に登録する運動を通じて、よりよい鎌倉の地域社会の形成が進むと期待し、その運動が広がり深化していけば、世界遺産登録にどんなに時間がかかっても、その間に得るものが大きな意義を持つことになるでしょう。拙速に登録に成功しても、管理運営に市民の支持がないと持続しません。登録の意義とともに、そこに至る経緯がいかに意義のあるものを生むか、それが重要です。その意味で今回のワークショップの意義は大きく、第2第3のワークショップを特に若い人たちに期待しています。
3.登録させたい側と登録する側にギャップがあるかも―後追いのコメント
(1)ユネスコの視点と鎌倉市民の視点は合致するか
 登録をするユネスコの立場と、登録させたい市民との間に、どうもズレがありそうだと感じました。空間と時間とにおいて、両者のとらえ方に根本的な差異があるようです。
ユネスコは、世界遺産だから地球レベルで卓越する貴重さを評価しますが、市民は地域生活圏における文化レベルを評価しようとして、空間的な評価のギャップがあるようです。宇宙から地球のある地点を選ぶ目と、地球上の一地点から見る視点の違いです。
 時間的な違いでは、ある歴史的時期に造られて今に残る「遺産」がその当時の真正性保っている度合をユネスコは評価しますが、市民はそれをとりまく現代社会における、「資産」としての意義を評価します。過去からの視点と、現在からの視点の差異です。
 このユネスコと市民との視点の違いは、ユネスコが登録権者であるとすれば、市民の方がユネスコの視点に寄らなければ仕方ないですね。学者、文化庁、行政はそれを承知でしょうが、市民はこれからワークショップなどで理解を深める必要がありそうです。
(2)世界遺産ではない緩衝地帯をどうとらえるか
「鎌倉を世界遺産に」といっても、市全部とか旧鎌倉全部とかではないのですね。推薦資産は、国指定の史跡や重要文化財などの拠点的な場所だけであって、ほんとに狭い範囲なのですね。
実はわたしは、京都や奈良はそっくり遺産登録と誤解していました。これらの歴史都市では遺産登録の拠点的な場所があちこちに沢山あるのを、ひとつひとつではなくて一度に合わせて登録したために、都市全体登録かと誤解しやすいとわかりました。
 それに輪をかけて誤解しやすいのは、それらのひとつひとつの推薦資産の周りに緩衝地帯を設けているのですが、それらがつながってかなり広い範囲を覆うものですから、地図を見ると都市全体登録に見えるのです。ところがこの緩衝地帯は城を守るために周りに掘りめぐらせた濠みたいなもので、世界遺産という城ではないのです。城は濠があるので登録されるけれど、この濠は遺産登録対象ではないのですね。
さて、ワークショップ記録を読むと、話題のほとんどはこの緩衝地帯のあり方だったようです。推薦資産は世界遺産としての価値はあるとしても、緩衝地帯がそれを守るほどの価値や力量がある地域だろうか、そして緩衝地帯に住む市民は推薦資産の保護を支える役割を果たすことができるだろうか、このようなことが真剣に討議されたことになります。緩衝地帯には日々動く市民生活があるのですから、登録する側とされる側の論点の違いといってよいでしょう。これは、世界文化遺産推薦運動の基本的課題をついていると、わたくしは思いました。
     以上、世界遺産半可通のコメントでした。
 

ワークショップ「世界遺産に鎌倉を」について コメンテーター 宮田一雄

3月15日のワークショップに助言者として参加しました。当日の発言要旨、感想などについてメモ程度ですが、報告します。 (1)ワークショップ開始時の発言
   議論の参考にしていただくため、以下の点について、感想を述べました。
・(神戸+京都)÷10 観光パワーは京都の3倍  鎌倉の人口は約17万人。京都は147万人、神戸は152万人で合計すると鎌倉のほぼ18倍の299万人になる。観光客は鎌倉が年間約1840万人。京都は4742万人、神戸は2812万人で、合計は鎌倉のほぼ4倍の7554万人。人口規模を考えると、鎌倉には、わが国有数の観光都市と比べても多数の観光客が訪れていることがわかる。人口1人あたりの観光客数は鎌倉が108人、京都が32人。つまり、鎌倉には京都の3倍の観光パワーがあることが分かる。世界遺産登録によって予想される観光客増を吸収しうる潜在力も、他の世界遺産に比べると大きいのではないか。
・ 分岐点1964 御谷騒動と日本橋
鶴岡八幡宮の裏山の住宅開発に反対する御谷騒動が起きたのは1964年、東京五 輪の年だった。目を東京に転じれば、日本橋の上に高速道路が覆い被さって走るようになったのも同じ年であり、いまだにその憂鬱な景観は撤去できないまま残っている。
御谷騒動が後の古都保存法制定のきっかけになったことを考えあわせると、鎌倉は東京を中心にしたわが国の戦後の開発ラッシュの中で、オルタナティブな発想を提示してきた町であるようにも思う。現在の首都に対する古都の持つ機能として、この点は重視したい。
・ 夕陽と共に去りぬ 日帰り型観光と眠れる町
 鎌倉は夜が早い。午後6時か7時には商店街も一斉にシャッターを下ろし、観光客でにぎわう昼間とはまったく異なる表情を見せる。
このことは、観光産業から見れば、夕方以降の時間帯という潜在的かつ巨大な観光資源が眠っていることを意味する。世界遺産登録を機に観光資源としての鎌倉が注目されるようになれば、これまでの日帰り型観光に加え、一泊型観光が増える(もしくは、増やす)といった変化も出てくる可能性がある。その変化をどう受け止め、どう対応するのか。いまから考えておいた方がいいのではないか。
・少し遅れて流れる時間 
初めて訪れても懐かしい鎌倉の魅力は先ほども言ったように戦後の開発ラッシュが進む中で、少し時間の流れを遅らせて進むことができた点にあるのではないか。その少し遅れて流れる時間が守ってきたのは中世の武家遺産だけではない。たとえばそれは明治だったり、大正だったり、昭和だったりする。世界遺産登録の文脈でそれらの価値をどう見るのか。少し遅れて流れる時間は世界遺産登録でそのペースが守られることになるのか、それともスピードアップしていくのか。このあたりも検討の材料になると思う。
(2)ワークショップ終了時の発言、および感想
 各グループからの報告をお聞きして、今日の議論の中で、鎌倉の良さについては、文化、自然環境が豊か、快適な空間、ほっとする、歩いて楽しい、町をよくしたいと思う人が多い、といったことがおおむね共通する意見として出されていたように思う。
鎌倉の短所としては、閉鎖性、道路を中心としたインフラの未整備、小型開発の散見、小町通りの原宿化、買い物や遊ぶところが少ない、などの意見が聞かれた。
一方、世界遺産登録に対する期待としては、観光客が増える(活性化につながる)、古都の破壊が止まる、ブランド力が上がるなどがあげられ、逆に懸念としては、観光客が増える(環境悪化を招く)、雰囲気が変わってしまう、規制が強まり生活しにくくなるなどが指摘された。
大づかみな印象としては極端な意見の振れはなく、認識には共有部分が大きいように感じられた。また世界遺産登録はどうしても認められない、強硬に反対するという人はいなかったように思う。ワークショップの性格も影響しているのかもしれないが、 鎌倉の人たちの意見の大きな方向性としては、世界遺産登録に対する強い反対はないか、あってもごくわずかなのではないかという印象を受ける。
そうした中にあって、やや気がかりなのは、世界遺産登録に対する関心が薄いか、知らない人が多いという点である。世界遺産登録を推進する立場に立てば最も警戒すべきなのは、反対意見ではなく、無関心なのではないか。その意味で、世界遺産登録関連の情報の発信力というものをもう一度、再点検してみる必要があると思う。また、伊達さんも中間のコメントで指摘されたように、大学生グループの中で、登録運動そのものが重要だという意見が出されていたことには注目したい。
ワークショップは、登録運動そのものに対する関心を今後、高めていくという意味でもひとつのきっかけを提供するものだったのではないか。議論も次回ワークショップへの展開に期待の持てるものであり、いい会合だったのではないかと思う。
 

ワークショップ「世界遺産に鎌倉を」コメント コメンテーター 齋藤俊英

○「世界遺産に鎌倉を」ということについては、まったく不勉強なのでコメントする立場にはありませんが、学校教育に携わる者として、「世界遺産登録」をどう考えるかといった問題を進めるには、やはり教育現場の役割も大きいのではないかと思っています。
この問題に子供たちが関心をもって、考え、行動すれば、大きな推進力になるだろうということは間違いありません。一昨年10月に、鎌倉市が主催した「古都保存法施行40周年記念シンポジウム ─ 次世代にどう伝える古都鎌倉 ─ 」が、鎌倉市内の高校の生徒たちを集めて、鎌倉女学院で開かれました。この催しのねらいは、鎌倉の世界遺産登録へ高校生たちの関心を向けていこうとするものであったと思いますが、このワークショップへの県立鎌倉高校の生徒たちの参加にもつながったものと思います。
○鎌倉の市民意識には、外から見ると独特なものがあると言われ、Aグループの人たちのご意見にも嫌いな面として取り上げられていました。私自身鎌倉に住んでいますが、鎌倉市民は、先住者も新参者も自分の意見をしっかり持ち、それをはっきり表明する人たちが他所よりも多いように思います。そこで「好きな鎌倉を守りたい方向がバラバラ」というFグループのような意見も出てくるのではないでしょうか。こうしたバラバラな市民感情については、経験に基づいた信念をしっかりもっている大人だけの議論で解決するのはなかなか難しく、若い人たちの議論の方がはるかに柔軟です。ですから、「世界遺産登録」の問題には、高校生、大学生はもちろんのこと、小学生も中学生も巻き込んでいったほうがいいと思っています。そして、そのためには、何よりも現場の教師たちに理解を求めて、議論をもっと広げていったほうがいいと思います。
○ところで、「世界遺産に鎌倉を」と言っても、鎌倉の何が世界遺産なのか良くわからない人がまだまだ多いのではないでしょうか。教師の間では、人にものを話すときには七つ八つの子にわかるように話せと言うことがあります。難しいことを難しく言うのではなく、誰にでもわかるように説明するのが教師です。エジプトのピラミッドのような建造物なら、古くて世界で唯一つしかないということで、人類の貴重な遺産だとわかります。鎌倉には、世界で唯一つという、形があり目に見える「文化」はどれだけあるのでしょうか。登録しようとしている「文化遺産」が、関心のない人にはわかりにくい。「わかる」とか「腑に落ちる」ということになるきっかけは、言葉で論理的に突き詰めていくだけではなく、「目に見える」ということもあるのではないでしょうか。登録するものが「文化遺産」だと言っても、見えないものはわかりにくいものです。
○ 昨年の秋、瑞泉寺で、夢窓疎石が鎌倉石の岩盤をくりぬいてつくった、草木もない庭を拝観した時のことです。大下和尚のお話で、人工のものを「足してつくる庭」ではなくて「そぎ落としてつくる庭」が禅宗の庭だということを伺って、なるほどと思いました。禅の庭を目の前に見るだけで禅とは何かがわかるということは、教育の場では大事なことだと思います。
瑞泉寺を訪ねる前に、永福寺の跡を遺跡全域が見える少し高くなった山の上から見ました。頼朝が奥州平泉で見た毛越寺や中尊寺の大長寿院を真似てつくったそうですが、建物の前に広がる庭は、京都の宇治平等院の庭園と同じ極楽浄土をイメージした浄土式庭園。池泉には洲浜もあったということでした。金沢文庫にある称名寺の庭園も浄土式。鎌倉には、戦国武将や大名がつくった大名庭園こそありませんが、浄土式庭園、方丈から座って見る庭園や、禅宗寺院の水を使わない枯山水庭園など、平安、鎌倉、室町時代の庭園様式を見ることができます。鎌倉にたくさんあるわけではないにしても、平安貴族の庭と武士の帰依した禅の庭を見比べて、そこから学ぶことはたくさんあると思います。
見て納得するということが大事です。京都、奈良に比べて、鎌倉はぐっと狭く、歩いて回れます。
この狭さを生かす、これが鎌倉のよいところではないでしょうか。
○「世界遺産登録」に当たって、「どんな町をつくるのか」ということが大きな議論となっています。「世界遺産登録」で期待できることとして、多くのグループで、史跡と自然が残されるとか古都の環境破壊が食い止められるといった意見がありましたが、「世界遺産登録」というのは、開発をせず現状を維持することなのでしょうか。貴族社会を壊して武家社会をつくった革新性、それが鎌倉武士なのだから、古いものを残すのではなく、壊して新しくつくるのもいいのではないかという考え方もあります。このことについては、教育の観点から言いますと、遺跡はつくられた当時のままに復元して見られるのが一番良いと思います。文化を理解すると言っても見えないものはわかりにくいわけですから、先人のつくった文化を伝える教育では、復元できるものはできるだけ復元して、今あるものはできるだけ壊さないで保存する、それが一番いい教材になります。建物も景観も、人が生きていくためには生きやすいようにつくり変えていくことも必要ですが、後世の人たちに、今の時代を知ってもらうためには、変えないものがあっても良いのではないでしょうか。ヨーロッパの都市に見られる旧市街の保存と新市街の開発とが調和する方法は取れないものでしょうか。
山に囲まれた旧鎌倉とそこを囲む大船や深沢地区とで町のつくり分けをして、観光客は、大船・深沢地区に泊まって旧鎌倉を観光する。そうすれば、保存と開発の問題をもう少しゆとりをもって考えられるのではないでしょうか。
○Eグループのご意見に、鎌倉らしい鎌倉独自の法規制の運用をしてもよいのではないかというのがありました。建物の高さ制限は景観維持に大いに役立つでしょうが、かつての別荘都市・鎌倉の景観を維持するには、ある程度の敷地をもつ家も必要ですし、生垣や狭い路地も残さねばなりません。
大阪の法善寺横丁は火事にあった後、建て直すにあたって、防災上道を広げねばならないという規則を敢えてまげて、元通りに狭い横丁にしましたが、鎌倉でもそういうことがあってもいいのではないでしょうか。相続税納入のため手放した土地が細分化され家が密集していくのを見るにつけ、税制上、景観を残すための工夫ができないものかと思います。交通問題でも、スイスのツェルマットでは外から車は入れません。上高地も一般車を規制しています。鎌倉も正月三が日の規制については実績があるわけですから、パーク&ライドをもっと徹底してもよいのではないかと思います。車の乗り入れを規制して不便になったら、それもエコでいいという鎌倉のモラルにしたらいい。鎌倉を訪れる観光客も期待される観光客に絞られるのではないでしょうか。鎌倉の谷戸には切岸に替わってコンクリートの壁がそびえています。県費工事だからと全県一律の工法でなく,谷戸の景観に配慮した鎌倉のやり方があってもいいと思います。勿論、こうしたことには、納得できる正義が必要ですし、公平性や安全性の視点も必要です。保存か開発かと同じように、バランスの感覚も必要であることは言うまでもありません。日本という国家としてのまとまり・統一性も必要ですが、地方の文化を尊重する観点に立てば、鎌倉には鎌倉らしいやり方があってもいいのではないでしょうか。地方分権の時代です。
 

総括シートI〜IIIからの項目別集計

【テーマ】
I−1:鎌倉の世界遺産登録で期待できること
I−2:鎌倉の世界遺産登録で懸念されること
II−1:鎌倉のまちの良い(好きな)面
II−2:鎌倉のまちの悪い(嫌いな)面
III−1:鎌倉のまちの良い(好きな)面が「期待できること」でどのように変っていくのか
III−2:鎌倉のまちの良い(好きな)面が「懸念されること」でどのように変っていくのか
III−3:鎌倉のまちの悪い(嫌いな)面が「期待されること」でどのように変っていくのか
III−4:鎌倉のまちの悪い(嫌いな)面が「懸念されること」でどのように変っていくのか

ワークショップ総括シートに貼られた票紙から意見・感想を対象別に集計した。それらがどの方面に集まったかを見るに止め、分析・解釈に関しては今後の課題とする。文の短縮をしてあるが、総括シート上の位置が判るように、テーブル名とシート上の区分NO.(上記注)を付した。 意見等は複数項目に係わるものも多いので、区分けは恣意的に行った。(記:福澤健次)

自然・史跡等
AI−1史跡と自然が残され古都の破壊が止められる/AIII−1自然環境と文化遺産が保全される/AI−2自然環境が好き/AII−1鎌倉には自然(海山)と史跡多い/京都・奈良に比べ寺社拝観料が低額、観光資源狭い地区に集中/BI−1海岸線の整備ができる/自然破壊、環境破壊がくい止められる/BII−1緑が多く気候がよく気持ちよい/鶯がなき色々な鳥がいて、山の木を大事に、6条が多いのがよい /CI−1世界遺産になることで緑地破壊を止めようという気になる(業者や都市計画部がその気になる)市民が鎌倉の日本的文化を守ろうという気になる/CII−1・緑が多い・歴史遺産が豊か・海や山を抱えた温暖な土地・工芸品、食べ物、土産物が豊か/山と海、空気に期待して移住、35年居住/まだまだ自然が残り緑が他地域より多い、素朴な史跡が多くある/歩いて多くの歴史的遺蹟を廻ることが出来る/鎌倉全体は北鎌倉〜鎌倉とほとんど変化がなく、横浜から来たとき変化の無い自然を見て心がいやされる/CIII−1緑地破壊が止まり、日本的(和風な)景観が保たれる/海、緑、寺、神社に少し足をのばせば行ける/DII−1友人を案内する所がたくさんある/EI−1鎌倉の残すべき遺産が保全、保護される/緑の保存に一定の効果、市民の自覚増進(日本の文化の多様性−世界史的に−)/FII−1緑が多い/歴史を感じる/海、山が近い、自然環境良い/GI−1文化財保護促進/GII−1自然環境が豊か/文化がそのまま残されている/景観がきれい/GII−1歴史を感じられる  【否定的・疑問】 AI−2世界遺産に頼らなくても古都鎌倉の維持保全はできる、法律・規制は完備?/BI−2人が増え、文化遺産が破壊される/CII−2緑が減っている海が荒れている−自然環境/FI−2自然が壊される/史跡以外の緑が守られるか?FII−2良い場所が知られていない
市街・住環境
AII−1緑に囲まれ静かな住環境を保持したい/AIII−2観光客が増える対応で道路拡幅など行われ小路が無くなっていくのはイヤ/BII−1観光客が来なければ良い/CII−1住みやすい快適な生活空間がある、文化的な香りのする生活空間である(小路など)/DII−1JR駅で空気の新鮮さを感じる/徒歩で廻れるコンパクトな町/DIII−1インフラ整備が進む/EI−1遺産は地域振興ではなく、登録される事で意識高まり街がキレイになる/古都のイメージアップを/鎌倉らしい街がより鎌倉らしくなると期待出来る、特に住居地域でそうなって欲しい/EI−2先ずは町をキレイにすることが先決/EIII−1画期的な交通規制 正月三が日はとても歩き易い、空気がいい!守られる?/EIII−2もっと不便で(ほんとうは不便ではなくそれがエコロジー、観光客にとって心地よい環境)にした方がよい、車乗り入れ、自販機、雑多な物・店など規制/EIII−3世界遺産の精神は環境保護に通じる 持続可能な街づくり、生活様式/街並み=バッファゾーンを守る 皆が「鎌倉のいい所を残したい」と考えれば、新しく移り住んだ人にも子どもにも伝わる、一人一人の心で守っていければいいと思う /FII−1立地が良い都市部から来やすい/FIII−1おかしな開発、宅地分譲が少なくなる/FIII−3道路整備進む/GI−1交通網が整備される/GI−2近代化はし辛くなる/GII−1少し奥に行くと空気がきれい/GII−2ソフト面でパーク&ライドなどの対策が進む/GIII−3交通網が整備される 【否定的・疑問】 AI−2交通インフラが整備されていないので益々住みにくい町になる/中高と鎌倉の学校だったが友人の多くは鎌倉を離れている(住みたくても住めない)大きな家が多かった和田塚あたりは家一軒の敷地は1/3位に分割され、ゆったりした所が少なくなっている、計画的な住宅地作りが必要/AII−2住環境の悪化/BI−2生活しにくい(道が狭い)/BII−2道路の整備がされていない/開発が進み小さい川の水が涸れてきて、蛍が減少している/BIII−3極楽寺周辺は道路の問題をはじめ整備の問題がある/DI−2(有名になることで)住宅地の細分化、アパート化/DII−2小町通りの原宿化/インフラ整備の悪さ(鉄道、道路etc)/車が多い/道路が狭い/横山隆一さんのアトリエのような、 鎌倉にある宝物が他市に移転されることが残念/夜が早い/案内板が少ない/DIII−3案内板は増える/GII−2交通の便が悪い/EII−2市民の為のインフラ設備が少ない,ex.病院、室内プール、日常雑貨の店/道がせまく渋滞が多い/GI−2気軽に入れない地域ができる/GIII−2排気ガスが出そう/GIII−4娯楽施設が増えない /FI−1市街が整備される/FI−2街の整備に方向性が見えない/FII−2自転車走りづらい駐輪場がない/歩道が狭い人がはみ出す
街並み・景観
CI−2古くからの町並み及び住宅の保存(相続税の関係もあるか?)・土坡を用いた垣根など特に残したい、住民も観光客も同じ視点/FII−1建物の高さが低い/スターバックスが日本家屋風、マクドナルドの看板が茶色などチェーン店の景観整備もされていて鎌倉らしい雰囲気が出る/季節を感じられる(視覚も、花の香りも)/景観保持が大巾に(良)方向に進む/見ていて飽きない/独特の谷戸の“風情” 【否定的・疑問】 BI−2電線が多い/開発問題が多発しすぎている、マンションが多すぎ古都の趣ない/ CI−2外国人が多く来るようになり、現状の景観に失望を与えはしないかAII−2街路が狭く電柱・ケーブルが景観を壊している/AIII−4宿泊施設が増え大資本が流入し古都としての佇まいが崩れる/BII−2新しい物(コンビニ、販売機)と古い寺社とのアンバランス/CI−2登録→外国資本流入によるチグハグな街づくりが進む/CII−2景観を害する電線/建物の色が不統一、安っぽい建物より古い日本式建物が望ましい/CII−2相続による土地・住宅の細分化−風土にそぐわない景観 日本文化の伝統的良さ失われている/CIII−4質のよい観光客(歴史を訪れる遠来の人等)が来て、彼らに失望を与えるのでは/FII−2開発により街並みに統一感がなくなっている/FIII−2若宮大路周辺の環境が悪化しないか/FIII−4わざとらしい街並み、作っている感じ
希望・提案
AI−2永福寺、東勝寺など復元すべき/AIII−2維持費捻出のため入口や切通しにETCで世界遺産維持費を徴収/旧鎌倉への道路地下化等の検討が必要、早期に/AIII−1観光客に遺産維持のための観光税(維持税)を協力してもらう/BI−2もっと発掘調査を/目に見えない史的文化遺産の掘り出しや復元を期待/世界遺産を機にしっかりした調査を/衣張山の麓、北条時政荘跡に開発問題が起きている、やぐらを大事にした自然公園にして欲しい/世界遺産にやぐらがない、鎌倉時代のものだから入れるべき/BI−1日月やぐら唐糸やぐらの山の平場も世界遺産エリアに/BII−2町並みを頑固なまで保全すべきではないか/BIII−1鎌倉には車で行かないという考え方を定着させる/BIII−2トイレの問題、どのように増やすか、出来れば鎌倉らしいトイレを/ゴミの問題、鎌倉のゴミのリサイクルの状態を話し、協力してもらう /BIII−3交通税の導入/車を市内に入れないようにする(パーク&ライド)、交通案内図を作る、駐車場の確保難しい/史跡保護・人数制限をする/BIII−4シルバーガイドその他の案内人をもっと増やす−案内内容のレベルの問題、市民全体の参加も必要か/石碑の文字について案内板を建てる(英、中、韓)/目に見えない史跡をどのように見せるか→CG使用/CI−2緑が失われマンションが建設されている所が多い、世界遺産を取得する迄環境破壊的なものをストップすべきだ/CII−1山の緑を手入れする為のボランティアを集め定期的に活動/日帰り以外の観光客も受け入れる様な宿泊所も少しは必要、前向きに考えて/CII−2開発(緑の破壊)が止まらず、文化が欧風化―鎌倉の住人は意識して和風文化を保つ努力を/公衆トイレ(洋式)の増設が必要/石碑の管理は各町内会(有志)で行うように!/交通渋滞に困っている観光客が多い、大船に駐車場を作る案具体化を急ぐべき/鎌倉らしい鎌倉の都市建設→(ディスカッションが必要)住み良い鎌倉、観光客に喜ばれる鎌倉を設計出来る /CIII−3街づくりのモデル地区を(地区住民の合意を得て)設定し、電柱撤去、広告規制などを集中的に行う/世界遺産としての価値―鎌倉時代が生んだ精神文化、生活文化、社会文化―を人々が実感できる施策―博物館他を整備/EII−2電線、給配水管の地中化/EIII−1パーク&ライド、公共の乗り物、人力車などの活性化/EIII−3観光客から観光税をとる/FI−1旅行会社と企画、集客進む/GIII−2町中に車を入れない/人力車を引く人(車夫)を公務員にする

法、規制など
AIII−1古都保存法の見直しが検討されると思う、山林等再検討が行わざるを得ない/AIII−4市街化調整区域を増やし開発による破壊をおさえよう/CIII−1古都保存法の(弱体部分の)補強/D1−1景観保持に関するregulation強化に期待/市街地開発に制限がかかる(庭木、垣の緑も「緑」として守る)/これまで以上に遺産保全の法のハードルが高くなる/市の観景に対する見方今迄より真剣に対応/DIII−1町造りのルールより鮮明になる/EI−1街づくりのルールが出来る/EIII−1建物など規制をかける、景観法の活用または鎌倉独自の取り決め(既存のものは対象外にする等)/EIII−1景観法を盾に保全しよう/バッファゾーンを守るのには現況以上の法規制をかけないか、鎌倉独自の法・モラルを作る/EIII−2鎌倉らしい、鎌倉独自の法規制の運用を/景観法をそのエリアのほとんどの人の同意で規制するしかない/鎌倉らしさを明確に作る、他とは違う 【否定的】 AIII−4現在でも建築等の規制が多いのに更に規制が強化される/DIII−2景観保持のRegulation強化に伴い一部住民の反撥が増す
人・生活・社会
AII−1静か、人々も極めて温和・知的/住民の意識が高い/AIII−1良い街にしようとする市民の認識が高まる/高校・中学生に「吾妻鏡」を勉強させ鎌倉の歴史を知ってもらう/AIII−3世界文化遺産登録運動の過程で閉鎖性・地方性の改善が期待できる/もっと若い人たちが住めるように、住んでほしい(今は住めない)(BII−2)/CI−2生活者と観光客のどちらの利益を重んじるべきか/世界遺産を機に住み良い鎌倉、来良い鎌倉を確立すべき/CII−1子育てに適した環境(文化遺産と教育施設・学校の数)と歴史のまち/CIII−1市民、観光客の意識向上に伴う自己規制/世界遺産登録を推進する運動自体に意義・一般市民の関心低い・現状のままでよいとする人が多い/CIII−2転入者も旧住人も隣人仲が良くない、この目的が出来た事でより多く話合いの場に出る人が増えコミュニケーションが深まる可能性がある/DI−1鎌倉の歴史認識が深まる、現在は鎌倉時代のみに集中→前後の歴史に焦点が当たる/DII−1鎌倉のまちをよくしたいと考えて汗をかく人がたくさんいる /EI−1住民の意識が高まる、住む街により関心を持ち大切にする気持ちが強くなる/鎌倉の町なみがこれ以上乱れる事がなくなるかも/EIII−1持続可能なリサイクルシステム作り出す/EIII−2この世の中何事も商業化、金もうけに走る!それをどう規制するか、もっとのんびり人間の本来一番大切なものを感じられるモデル都市にしていきたい/EIII−3登録に向っての住民のパワー/“鎌倉らしさ”を市民全体で話し合う気運が高まる/FI−1運動を通じ市民同士行政などの横のつながりができる/市民・行政・学生・企業などのつながりをつくる良いきっかけになる/歴史と文化が共有できるようになる/FIII−3個別の運動がつながる/GII−1現地の人の道案内が上手い/GIII−3住民同士のつながりで町をつくる 【否定的・疑問】 AII−2鎌倉市民 意識がきらい/閉鎖性が強い/古い人間・先住者が支配する社会/BI−2人が増え生活しにくくなるのでは/CIII−2法規制(15m法案)による住民とのあつれき/CIII−4犬の糞の処理をしない人多い、正しく飼う者まで迷惑、ペットに対する正しいルールを強くすべき*注意書の札が多すぎ景色台なし/世界遺産規制による生活者への影響/DI−2観光都市物価にならないか/DII−2買物・交通の便がよくない/DIII−2生活者の環境、人が多くなり脅かされる/DIII−4物価の上昇/本来の文化と違う文化が出来る/EIII−2相続が問題だ/FI−2住人の生活がおびやかされる/FIII−4好きな鎌倉を守りたい、方向がばらばら/GI−2住民の生活への規制は?/GII−2物価が少々高い(土産屋)
観光・商業
AIII−2市民の意見が分裂する(生活者と業者)/BII−2物価が高い、ナイトライフが楽しめない/DII−2夜が早い/商店等の店員の接遇が悪い→今後も心配/DIII−4住民を置きざりにし、観光客だけを相手にする商店街とならないか/BI−2商店街中心に考えるともっとゆっくり、変化して欲しい 鎌倉のイメージが更によくなる/国内的に/先ずは観光客のマナーの向上を望みたい/商業のモラルが国際化出来ていない/観光客が増えると自分で調べて来る人だけではなく、世界遺産だからというだけで来る人が増える/EII−2商業者のモラル(向上の必要)/もともと観光客が多いので地元が努力しない/観光客が多い、夏の江の電は長蛇の列/EIII−3ゆったり観光してもらえる、日帰りでなく宿泊型観光/質の高い商業活動を期待できる持続可能な環境配慮型の新しいシステムを考えられるのでは/EIII−4観光客目当ての質の悪い店が増える心配がある。→出店の規制ができないか?/観光客が増え鎌倉に対する国民的関心を高める/FII−2観光地にしてはトイレが少ない/FIII−1旅行会社とタイアップしやすくなる /GI−1観光客の増加/GII−1花火が凄い。桜もキレイ/GIII−3商業者同士でつながりを強くする
混雑ほか環境悪化
AI−2講師説明では鎌倉の観光収容力は高い、がそれだけ余裕が少ない、遺産指定で更に増えれば混雑が心配/AII−2Park & Rideのプログラムが機能してない/AII−2観光公害「静かな住宅街」を望む人に観光客はマイナス存在/交通環境の悪化/AIII−2観光客が軒先まで入ってくるようになる/道路交通に懸念/AIII−4環境負荷(大気汚染、交通渋滞、廃棄物処理)が増加する、具体案を今から講じないといけない/BI−2人が増えますます混雑、生活し難くなる/静かな生活が破られる/BIII−3ハイキングコースなど観光客が増えれば、川にゴミを捨てる人が多く川も汚れゴミが増え、困る/CII−2建築規制の無力化/緑の自然が破壊されている、道路が狭く人があふれている、交通が激しい、老人に厳しい、公衆トイレ(洋式トイレ)/DI−2観光客が相当増加するので、交通混雑がひどくなり市民生活が乱れる/DIII−4交通混雑さらに増大/観光客増大による環境の悪化/EIII−1相続による開発を阻止できるか?/FII−2ごみが多い、観光客多くなる、集積所汚い/観光地、混雑激しい /GI−2ゴミの増加/交通の混雑化/GIII−4ゴミ問題。(簡易包装をする)
開発、保護・整備
AI−1街並みが整備される、乱開発を抑止する事に役立ってほしい/AIII−1乱開発がやり難くなるなら、鎌倉が好きになる/AII−2緑と山がくずされている/4条域の宅地造成があり、史跡の遺構がある/BI−1乱開発の禁止、高い建物が建たないのでは
BI−2文化財的価値のある所が開発されそう/緑保護と文化遺産保護の兼ね合いの難しさ/文化遺産のある所に住むが近くで開発が進む、文化遺産の自然破壊からの保護、すべきなのか/DII−2鎌倉山の開発の活発化/DIII−3乱開発が抑えられる/DIII−4乱開発抑制に対する一部の反発/FI−1環境整備(入市税を取る等)の理由ができる/各地で盛んになってきているまちづくりのモデルケースになる

情報・宣伝
AI−1世界への宣伝が不足、指定で国際性向上、市民の国際意識向上/AIII−1国内的にも鎌倉についての認識が上る/BIII−4シルバーガイドその他案内人にもっと広報/家庭(市民)へのPR 公教育の現場での登録の歩み(と目標)を総合学習で推進してほしい・市長のリーダーシップ発揮・教育委員会へ/CIII−1世界へのPR 鎌倉の登録への取り組みのPR強化→IT:市HPの充実→世界へのアピール/CIII−2住民及び近隣へのPR「鎌倉は今何をしようとしているか」/CIII−3鎌倉の枕言葉「星月夜」はどこに?冬の一日を星月夜の日とし、市民が一定時間一斉に消灯するするキャンペーンは効果あろう/鎌倉らしい都市空間を造る気運を高めるキャンペーン活動を具体的に考える/情報が広く知られやすくなる、愛着が持てるようになる/FII−2(登録の動き)情報が少ない、伝わっていない/世界遺産のアピールが足りない/きっかけとなるわかりやすいイベントがない/FIII−3情報共有進む、発信される/GI−1文化財への関心が高まる

経済・財政
AI−1世界遺産登録、国から予算処理して貰えるのでは/AI−2市の文化予算低い、文化遺産へ支出大となれば必要な教育文化予算は圧迫される/財政的に不要を感じる/AII−2保存の経費―将来の負担/登録されたら金がかかる/AIII−2次世代の市民の足かせにならないか、鎌倉の発展を阻害するのではないか/AIII−4登録世界遺産の維持費用の負担が第一利益授受者の観光客でなく市民に負わされる/市民の高年齢化、法人税収入は減る(企業進出が制限される)/現状でも文化面の予算が少ないのに世界遺産維持の為に費消され圧迫される/CI−1観光客増による経済活性化/CIII−1観光客増により市経済が潤う/DI−2Buffer Zone 外の地域はますます疎外され、歴史文化予算もその分玉縄には薄くなるのでは/DIII−4域外へのシワ寄せが更に酷くなる(予算、政策など)/EI−2より商業的な波にのみこまれそうな気がするGI−1経済が潤う

世界遺産に疑問
  AI−2世界に発信する遺産は分りやすく一目瞭然であるべき、ヘソ・ポイントない、世界遺産に指定されれば、どの程度の来訪者を見込むか?その場合の環境負荷は?/今迄の段階では世界遺産登録に期待出来ない/海外から来る人に対し視覚に訴える遺産が少ない・迫力ない/AII−2一般市民で世界遺産登録を必要としている人少ない/BI−2指定されない所の人は関心ない、かって開発に際して調査がされてない、開発が進みすぎていて保全できるのか/英訳では古代の鎌倉だが古代は消えたのか/CI−2世界遺産申請が何故こんなに遅れたのか、運動は10年以上前からあった/CIII−4 同/DI−2武家の町武家文化というなら、後北条の玉縄城(戦国)時代を何故とりあげない/EI−1登録をしようとしているのなら腹をくくって、他の街と違う鎌倉ならではの動きを作る必要がある/EI−2なぜ登録しようとしているのか明確に見えてこない/世界遺産という名ばかりが一人歩きし、内容的に満足のできるコアゾーンが少ないのではないか/EIII−2世界遺産に向けてほとんどの市民がしらけている、盛り上りない! /FII−2世界遺産にふさわしいのか?ふさわしいものがない/FIII−2世界遺産で何がしたいのか/FIII−3「柱」がない、→「つくる」

鎌倉の名声、誇り
AI−1カマクラという名前が世界に普及、鎌倉市民の誇り/AII−1鎌倉に住むことにプライド/世界遺産 鎌倉人のプライド増大、世界遺産の街に住む誇り/AIII−1「鎌倉」ブランドがますます高まる/世界遺産として国民の意識が高まる/市民としてプライドを持てる、観光客に特別な意識をもってもらう./鎌倉のイメージが更に良くなる/国内的にも鎌倉についての認識がプラスされる/BI−1鎌倉のブランド力が増すのか/CIII−1鎌倉の名前がより世界的になり地元の文化財の存在も再認識される/DI−1都市ブランド力の向上/DIII−1ブランド力が世界に向上する/EI−1地名の国際的地位の向上/EII−2ブランド化、商業化されすぎ/古都のイメージアップを図りたい/FI−1日本の鎌倉から世界の鎌倉になる/鎌倉の支持者増加/GI−1県民として誇りを持てる/GII−1「鎌倉」という名前にブランド性がある/GIII−1「鎌倉」ブランドがさらに上がる/

武家の古都(の方針)について
AI−2武家の社会といって武家屋敷はない/AII−2武家屋敷がない/EIII−2  同 /BI−2“武家の古都”の武家がなじまない/CII−1鎌倉及び周辺の地形全体の特殊性をアピールすべき/FI−2“武家の古都”のイメージに固執しすぎてテーマパーク化しないか/FIII−2街並みなど、「武家の古都」にとらわれすぎないか/「武家の古都」以外の文化は守られるのか/「湘南」は残して欲しい/FIII−3わざとらしくない統一感。「武家の古都」を軸に「総合的な」歴史

多面性
AII−1都会の様な田舎の様な雰囲気、どちらも楽しめる/鎌倉時代の出来事が先週あった様に語り継がれる雰囲気/EII−1古くて新しいところ/文化と自然のほど良い混在/古いものと新しいものが混在している/FII−1昼のにぎわい、夜の静かさ(小町通り)両面性/FIII−4明治、大正、昭和の文化が「武家」で変わってしまう

平和
AI−1世界に日本の平和主義、武家の精神を発信できる/CI−1平和の街の保障
 

写真・データ

会場風景 会場入り口の張り紙

−当日配布資料― 
武家の古都・鎌倉パンフレット、同 リーフレット、武家の古都・鎌倉ニュース、同 鎌倉マップ
世界遺産登録に向けて「武家の古都・鎌倉」・国内暫定リスト・鎌倉の世界遺産登録に向けた考え方・
鎌倉世界遺産推進協議会活動の進め方・「歴史都市鎌倉のまちづくりー鎌倉の世界遺産登録を考えるー」


「世界遺産に鎌倉を」ワークショップ
開催日 2008年3月15日(土)
於  御成小学校多目的ルーム
−企画・運営・編集等参加者−
ファシリテーター 藤井経三郎
資料紹介 内海恒雄
コメンテーター 伊達美徳
宮田一雄
齋藤俊英
テーブル進行役A 大竹正芳
同   B 高木規矩郎
同   C アルバレス万智子
同   D 田川陽子
同   E 長谷川栄子
同   F 山崎恵美
同   G 横川 啓
テーブル参加実行委員A 中村公司
同    B 斉藤紀子
同    C 平井 嵩
同    D 菅野俊雄
同    F 城田為次
同    G 長谷川厚
テーブル参加 市職員A 宮崎 隆
同    B 斉藤一真
同    C 玉林美男
同    D 近野正幸
同    E 宇高 毅
同    F 鈴木庸一郎
同    G 藤森秀一
記録・進行担当 原 節子
同  島田正樹
同(編集参加) 服部基己
小川充則
企画参加実行委員 青木政行
卯月 文
中島章夫
総括・司会・報告書編集  市民F.実行委員長  福澤健次


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