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第3回『みんなで考える「どう守る私たちの世界遺産」』
(平成21年)報告8頁

テーブルE報告  テーブル進行役 高木規矩郎

発表する 高木さん
発表する 高木さん
テーブルEは、大町に住んでいる現役の銀行員、一年前に定年退職された大手電機メーカー会社員、東京・大田区の工場経営者、テレビ会社員、それにサポーターとしての住民活動家、市役所の世界遺産担当と変化に富み、刺激的な顔ぶれだった。 最初の自己紹介のときに、「遺跡と生活」というテーブルの切り口について、「見える鎌倉と見えない鎌倉をどうつないでいくか。『守る』ということはどういうことなのか。鎌倉の価値とか魅力とは一体何なのか」と討論の目的をあきらかにしてくれた。

最初のテーマは「遺跡と生活」。旧鎌倉はほぼ全域が埋蔵文化財包蔵地である。遺跡と毎日どのようにつきあっているのか。 銀行員は毎朝ごみを出しに行くとき、自宅の前の路地が車大路跡だったと知って思いを新たにしたという。「こんなところから入っていけば、地に足のついた世界遺産の目標がたてられるのではないか」と体験に基づく意見を示した。 息子の宿題で、はじめて切通の七口を回ったという元電機メーカー社員は、見えないところを強引に見えるようにするのではなく、ビデオなどで三次元表現も可能だと専門的な視点を指摘、「バーチャルを取り入れて新しい遺跡の考え方で世界遺産そのものをみていったらどうか」という。 いずれも住民ならではの真剣な模索の跡がうかがわれた。

毎月1、2回は鎌倉に出てきて、山をハイキングしている工場経営者は、「遺跡は掘るとたとえば兵馬俑が出てきたり、地下の大きな墓があったりする。そういうのを世界遺産的価値のある遺跡だと思う。ところが残念ながら鎌倉には何もない」として、遺跡は世界遺産候補から外すべきだと断定した。住民ではないからこその客観的で正確な指摘といえる。 ワークショップのような継続的な討論を通じて、市民の理解を広げていくという地道な作業が必要であることを痛感した。

次のテーマは周辺山稜部に散在するやぐらの評価。「朽ちかけているやぐらを歴史として保存を考えるべきなのではないか」として意見を求めた。 「崩れてしまったやぐらの残っているところに何か意味があるのか。やぐらは別の文化的価値を持つもので、世界遺産とは切り離してかんがえるべきもの」と東京組。 これに対して鎌倉居住組は、「静かな風土とか、切通や、やぐらなどを知りたいというのなら、車で来てもらってはいけない。おにぎりを持って、自分の足で歩いてきて、それで見に行くという人たちだけがきてくれれば、それで十分ではないのか」と切り返した。 もう一人の居住者は、「ひっそりと山の崖にやぐらを掘るというのは、日本人の原点の姿である。確かにこれが世界遺産になるかというと難しい」と三者三様の審美観が目立った。 「やぐらは文化になりえなかった。お墓で終わってしまっているという気がする。やむなく山稜の狭いところにそうしたお墓が出来たという感触のものしか、私はまだ見ていない」としてやぐらの近くに住む画家は、鎌倉の価値とか財産とは何かという疑問を再提起した。「モノではなくて心とか哲学とか、気持ちとか気分ではなかろうか」というのが画家の暫定的な結論である。       

討議中のテーブルE 本題以外にも重要な視点があいついで提起された。中には世界遺産を目指す街の現状認識の甘さを突く意見も出た。
(1) 破壊されてきたのは地下の遺跡だけではない。 空も少なくなってきた。少なくとも旧市街全域でビルを建設禁止にするなど、法律や条例を作るべきである。
(2) 点としての遺跡を、鎌倉物語としてストーリーで線につなぎ、面にして町にして首都圏の中の鎌倉の価値を考えてみたい。
(3) 深沢とか大船のような新市街地に鎌倉市政の中心を移し、旧市街地は世界遺産のための整備モードで作り直していく。
(4) 価値のないものはふるい落として、核心だけで登録を図る。鎌倉の世界遺産といってもほとんどの人は分からないので、街全体が世界遺産になったと思いこむであろう。この善意の思い違いこそ大事で、一旦登録されれば街の価値は十分出てくる。それからじっくり遺跡に取り組めばいい。

ワークショップはブレインストーミング(BS)という本質が見事に証明されたように思う。討論によって学ぶ楽しみを実感した。ビールを飲みながらでも自由に息長く続けていきたいものである。
テーブルEのまとめ
仏法寺跡から浜を見る
仏法寺跡から浜を見る
朝夷奈切通
朝夷奈切通
和賀江嶋
和賀江嶋
やぐら

やぐら
討議中のテーブルE
討議中のテーブルE
鎌倉市 都市マスタープラン
※参考に鎌倉市 都市マスタープランの理念「くらしに 自然・歴史・文化がいきる鎌倉」と、
将来都市構造の図を左に示す。(編集)

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