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第2回「みんなで考える「世界遺産おすすめルート」」(平成20年)報告3頁

第2回世界遺産ワークショップの報告  コメンテーター 宮田一雄

「武家の古都・鎌倉」の世界遺産登録を目指して開かれた第2回ワークショップは、24カ所の世界遺産候補を生かしたルート作りという具体的な作業が議論の目標として設定されていたことから、世界遺産と鎌倉との結びつきをこれまで以上に現実的に考える機会を提供することになりました。
平泉の世界遺産登録先送りという事態の余波を受けるかたちで、これまでの鎌倉の世界遺産登録推進スケジュールもいったんご破算となり、仕切り直しが必要になってます。こうした時期には、どうしても目標を喪失し、登録推進に向けたエネルギーも求心力を失いがちなだけに、今回のルート作りのように目に見える成果物をひとつひとつ残していけるような機会を今後も具体的かつ継続的に積み上げていくことが必要ではないでしょうか。そうしたことを感じさせるワークショップでもありました。
50人近いメンバーが6つのグループに分かれて進められたディスカッションは、最初のうちこそやや戸惑いがちでしたが、地図を広げて具体的なルートを描き出していく過程に入るとがぜん熱を帯び、どのグループも楽しそうに作業を進めていたことが印象的だでした。コメンテーターとしては3回、意見を述べる機会を与えていただいたので、以下にその概略を含め、いくつかの感想を記させていただきます。
【各グループの議論に先立つ事前コメント】
 古都には2つの意味があります。ひとつはかつての政権都市であること。そしてもう一つはすでに政権都市ではないということです。
古都が古都であるためには、前者の政権都市時代の遺産を守ることがもちろん大切ですが、一方ですでに政権都市ではないということにもきちんと目配りをしておく必要があります。古都であるという自己認識のもとに、無冠の時代ともいうべきその後の長い時間の蓄積の中で生み出され、付与された新しい価値を伝えていくことができなければ、古都は現在の政権都市に対し、古都としての存在理由を失うことにもなりかねません。その意味で、古都の存在は、あり得たかもしれない現実、もう一つの選択肢の保持といった観点からも重要であることには注目しておく必要があります。
世界遺産候補という点を線で結んでいくルート作りの作業には、古都の持つ重層性、ふところの深さ、古さが生む新しさといったものの魅力を引き出す可能性が秘められています。点に比べると線は、はるかに多くの余剰を抱え込むことが可能であり、地理的な線が自在に時間の軸を縫っていくといったかたちでルートを生み出すこともできるのではないかと思います
【中間発表時点での感想】
コメンテーター宮田一雄さん さまざまな議論の広がりがあり、これからどのようなルートが出来てくるのか楽しみです。
個人的な感想をあえて付け加えさせていただければ、海を生かす視点がもう少しほしい。鎌倉は何よりも海を抱えた古都であるというところが大きな魅力だと思います。海は京都も奈良も持つことができません。武家の古都は武家だけに支えられてきたものではなく、商業集積地としての材木座地区がかつて持っていたパワー、その記憶が伝える魅力に着目してみるのも面白いと思います。
お話をうかがっていて、具体的なルートの選定という作業が逆に、古都・鎌倉の抱える課題、問題点を浮き彫りにするかたちになっているのも興味深い点でした。たとえば、交通渋滞対策、トイレ整備などが各グループの発表からも指摘されています。
【終了後の感想】
 ルートの選定作業は実は、多くのものを切り捨てていく作業でもあります。くっきりとしたラインを描くためには、コンセプトの明確化が必要だからです。しかし、そのような作業を経て、いったんラインが明確にされたら、今度は一転して、そこに多くの要素を盛り込む作業を進める必要もあります。ひとつのルートは単線ではく、時間の蓄積といったものも考えれば、複線、複々線的な重複化されたストーリーの魅力を抱え込むことが可能ではないかと思います。
そして、その中に近代への着眼といったものが入れば、たとえば円覚寺の境内を走る横須賀線 に対する評価といったものも、時代が残した景観としてもう一度、再評価を試みることができるかもしれません。たくさんの時間、数多くの日常が堆積して現在があり、その肥沃な現在が明日の糧になる。そうした古都の不思議さを持つ現役の都市であるからこそ、鎌倉は世界遺産にふさわしいのではないか。鎌倉の魅力を大きくとらえるにはそうした視点もまた、必要でしょう
 

ワークショップ 感想・寸評

今回、東京大学の赤川先生にワークショップへの参加を要請した際、若い社会学徒の皆さんの参加も打診してみました。幸い4名の方たちが参加してくれることになりました。学生諸氏は一面では、鎌倉の住民参加のワークショップを、社会学の研究的な目で覗いていたことになります。 そこで、鎌倉市民や鎌倉世界遺産登録推進協議会の側からは、どういう感想をもたれたかに興味を感じました。そこでこのスペースを設け、「感想・寸評」の寄稿をお願いしました。(実行委員長)
御成小学校での話し合い 
今回のテーマに相応しく、伝統的な建造物としても有名な御成小学校でワークショップが開かれたことが大変気に入りました。また、メンバー構成も老若男女がバランス良く参加し、私も年配の方々と一つのテーマでじっくり話すことに刺激を受けました。そして、つくづく鎌倉は風土・歴史遺産という点では恵まれた環境なのだなと憧れと同時に羨ましさを抱きました。(天谷力蔵)
世代間意識差の乗り越えを 
年齢層が20代と、比較的年配の方々とに分かれた班に参加した。前半を主導したのは年配の方々。皆様の鎌倉に関する知見の深さ、歴史や地勢に関する知識の豊富さに圧倒された。一方、中盤以降に若年層から出された疑問の核は、寺社を巡り歴史を訪ねる従来の「王道ルート」が、果たして若者に受けるか、という問題だったように思う。今回現れた鎌倉に関する知識格差、感じる魅力の違いには市内/市外よりも年代の違いが現れていたと思う。街の魅力を今後につなげる為に、世代を乗り越えるアピールが期待された。(大川愛子)
感想・鎌倉のワークショップ 
今回、鎌倉の生き字引がいかにたくさんいらっしゃるかを知りました。市内在住者はもとより市外在住者も、それぞれの名勝への道筋、勾配、蛇行、トイレや屋根の有無まで頭の中に入っているのです。鎌倉がいかに人を惹きつけてやまないか、その魅力を垣間見たようでした。「人が協働することそれ自体が世界遺産登録の目的のひとつである」、との福澤氏の言葉が印象的でした。鎌倉を愛してやまない生き字引が確かに存在し、それがこれからも連綿と受け継がれ続けていくこと、それこそが鎌倉の、「遺産」に勝るとも劣らない「資産」なのでありました。(税所真也)
鎌倉に新しい風を入れる試み 
最近、鎌倉在住の方から「鎌倉のまちづくりの課題は、今の鎌倉の姿をきちんと守りながら、新しい風を入れていくこと」だと伺いました。今回、私たちがこのワークショップに参加させていただいたことも、そのような試みの一つだったのかもしれません。「鎌倉の伝統を守ること」と「鎌倉に新しいものを入れていくこと」という、一見相反するベクトルは、ルート作りにも現われたような気がしています。鎌倉の「王道」コースを作るだけではなく、多様な人々が鎌倉の良さを解釈し提示するコース作りは、まさに鎌倉に新しい風を入れていく実践であると感じました。(野辺陽子)
 

ワークショップ データ

第2回ワークショップ 2008年10月26日
「世界遺産おすすめルート」於 御成小学校体育館

−テーブル別・参加者 住所−
〈テーブルA〉
税所真也   高橋健治   中村公司   畑 咏持   Leslie Lorimer 
〈テーブルB〉
天谷力蔵   柿澤昭治   工藤顕親   香山 悟   松本 隆 
〈テーブルC〉
石原宏樹   草場圭三   齋藤政丈   深澤範凡   吉川 昇 
〈テーブルD〉
岡本真治   高橋 弘   野辺陽子   佐藤卓人   漢那 肇 
〈テーブルE〉
一戸良行   大川愛子   加藤卓也   小鮒修仁   山本政夫    山村みや子 
〈テーブルF〉
宇治牧子   大屋 進   木下政憲   千葉忠雄   齊藤真康   中村あかり 
宮部誠二郎 
−運営参加者名−

◆コメンテーター
宮田 一雄   赤川 学
◆テーブル進行
A:田川 陽子  B:長谷川栄子  C:山崎恵美  D:横川 啓  E:高木 規矩郎  F:大竹 正芳
◆テーブル参加の協議会委員等
A:城田為次  B:菅野俊雄  C:平井 嵩  D:県立鎌倉高校教諭 長谷川厚  E:大野 健一  F:香山 隆
◆テーブル参加の市職員
A:斎藤 一真  B : 藤森 秀一  C:鈴木 庸一郎  D:宇高 毅  E:宍戸信悟  F:宮崎 隆
◆記録・進行担当
讓原 準  島田正樹  橋本和也  金子智哉
◆記録・進行担当&報告書編集・作図
服部基己
◆総括進行・報告書編集
福澤 健次
−当日配布の資料−
第1回ワークショップ実施報告書(概要版)
武家の古都・鎌倉リーフレット
武家の古都・鎌倉マップ
−使用ベースマップ−
縮尺1/6,250(本報告書に使用したマップとは異なり山の等高線が詳しく入った図)

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